鮭いおぼやのはなし 鮭川のめぐみ

鮭川の恵みは鮭のみならず流域の様々な農林、蓄、水産物を滋味豊かに育みます。
その代表的な産物を紹介するとともに、これらにたずさわる人々にも触れてみたいと思います。

鮭に選ばれた川

鮭に選ばれた村上の三面川

6500万年前に形成された大陸性隆起花崗岩質の朝日連山は、
生命の源となる膨大な雨や雪を受け止めてきました。
やがて芽生えた森の木々の中でもブナやブナの仲間は大きく繁栄し、
山菜やキノコ類のほ かこの地方に有用な稀種、朴や栃や漆をもたらし続けています。
ひとえに山と森と降雪なくして語ることのできない悠大な連携プレイの源泉といえます。

[春]マス [夏]アユ [秋]鮭

秋鮭

[春]マス [夏]アユ [秋]鮭

 秋から冬にかけて鮭が溯る川は、春にはマスも溯ります。
元来清流である鮭川にはヤマメ、イワ ナ、アユ、ウグイなども生息することは枚挙に尽きません。
豊かな森からの有機質水系には川 藻や昆虫などの餌も豊富に生息して生命力に溢れています。
参照:原色魚類検索図鑑、阿部宗明、 北隆館1979 森とまちづくり工房はやし 岡山理科大波田研

鮭に選ばれた川
いくつかの鮭川条件を要約してみますと次のようになります。
①酸素を多く含んだ流れ、つまり”湧水質の淡水清流源”が必要
②清流に運ばれた栄養分がもたらす”生態環境の薫かおり”が必要
③溯上に適した、”河渓淵と樹陰”が必要
④産卵と孵化に適した、”浅瀬で砂礫質の緩やかな川床”が必要
⑤生態環境を熟知し、採取・再生循環させる”人々の知恵と努力”

江戸幕藩体制の後期には村上藩の財政と流域民の生活を潤す回帰性の鮭を、
川守の立場から合理的に見つめた、”種川 の制”を「青砥武平治」が 創出しました。
この功績は現在の孵 化・養殖事業の架け橋へ と繋がり生き続けていま す。

有史以前から認知されていた鮭の回帰習 性は平安期を経て周知となり、
その時代の人々によって熟成形成された鮭文化は今、創業200年を超える「越後村上うおや」へ
連綿と繋がっています。
嵐山光三郎著、『ローカル線温泉旅』にうおやと 村上の鮭が紹介されています。
(講談社現代新 書、2001.9.20刊)

鮭文化

村上藩の財政と流域民の生活を潤す回帰性の鮭を、川守の立場から合理的に見つめた、”種川の制”を「青砥武平治」が創出しました。

近代農業の繁栄は品種改良の賜物で あり次々と付加価値の高い品種を創出 してきました。
特にお米は、森のもたらし た豊穣の大地と水との相乗効果で最高 品質へと結実しました。
その感謝を神へ 捧げるためのお神酒も最高品質である ことはいうまでもありません。

鮭の酒びたし、酒、岩船産こしひかり

鮭の酒びたし、酒、岩船産こしひかり

山深い地形は温度差がもた らす気候変化を連鎖させ、農作物の生命力を最大限に引 き出してくれます。
糖度や抗 酸化性の高い品質が得られることで、格別の食味と滋味を 育み続けています。

落ち葉の意味

落ち葉の意味

<落ち葉の意味>
「森は肺、川は動脈、湿原は腎臓」~C.W.ニコル~
落ち葉が分解されるとフルボ酸という物質が出来ます。
フルボ酸は鉄と結びつき、 植物プランクトンや海藻類にとって不可欠な養分として、
海へと流れていきます。
「森との関係からみた水環境」~名古屋大学 基礎セミナー
新田厚史・ 門脇俊介・高木拓実「水環境とライフスタイルを考える」
鉄は、森の腐食土層の中にあった鉄イオンが水にとけて流れだし、 河川を通って海まで供給されます。鉄は、海藻の生育や植物プランクト ンの増殖に効果があることが研究されています。
『渓流保護ネットワーク』リンク集による